先日、ちょっと遅れてメキシコの友人からグリーティングカードが届きました。デザイナーの彼はメキシコらしいグラフィックやプロダクトをたくさん生み出しています。カードのグラフィックも彼の作品。かわいいでしょう。さりげなく日本語が入っているのは、彼には日本人の友人も多いからなのです。

今ではメキシコにも約7%しかいないという純粋なマヤ人である彼は、ルイス・バラガン邸のアートディレクターでもあります。愛知万博が開催されたとき、中日新聞の招待で、メキシコ館のアートディレクション担当として半年ほど日本に滞在していました。だから、日本語も少し話せて、バラガン邸に訪れる日本人にはありがたい存在です。
私がメキシコを訪れたのは、やはり、この目でバラガンの建築を見たかったから。建築を巡る旅をするのは大好きですが、2002年に東京都現代美術館でバラガン展を見て、いつかメキシコへ、という思いが強くなりました。
実際に行ってみて思ったのは、やはり建築は見るものではなく感じるものだということ。
バラガン邸ではとくにそれを感じました。
まず、邸宅のエントランスを入ると、ガイドの案内で、薄暗い小部屋で15分ほど、ゆっくりと時間が流れるのをただ待ちます。そして、リビング、ダイニング、バラガンの寝室や礼拝の場所へとガイドされるのです。
なぜ薄暗い小部屋で待つのか。。それは、メキシコの明るい日差しに慣れた目では、バラガンの空間の微妙な光のニュアンスを感じ取ることができないからなのです。

それまで写真集で何度となく目にしてきた空間。でも、そこに行ってみて、その光、色、空気、すべてが五感を刺激し、バラガンの世界を体で感じました。バラガンは光に色をつける試みや、光を十字に切り取るなど、様々に光の可能性を追求した建築家の一人だと思います。日本を代表する建築家の安藤忠雄氏や伊東豊雄氏が強い影響を受けたというのも肯けます。バラガンの寝室の小さな窓の日よけ扉を閉めると、部屋に十字の光が映し出されます。その光景は、まさに安藤忠雄の光の教会のモチーフと重なるのです。
バラガン邸のほど近くにあるヒラルディ邸の素晴らしさも同様ですが、こちらは、今も現役の住宅として使われています。居住者の生活を邪魔しない程度に覗き見るという感じです。
それにしても、なんて贅沢な邸宅なのでしょう。プールに差し込む光が緻密に計算され、時間によって、その景色が変わっていきます。
中庭に大きなジャカランダの木があって、バラガンは、その木を活かすために中庭に面する外壁を紫がかったピンクに塗装しました。その色はまさにジャカランダの花の色。5月になると花が咲き誇り、やがて散って中庭を花のじゅうたんのように埋め尽くします。そして2つの面が同じ色になるのです。
日本では、まず目にしない色。メキシコの光とこの色彩感覚に圧倒されたのでした。

ちょうど先週の日曜日までワタリウム美術館で
バラガン邸のエキシビションをやっていましたね。
私は訪ねることができませんでしたが、もし美術館でその素晴らしさに触れられた方、メキシコまで行く価値あります!